<歯周病>歯肉から膿が出ている(パグ 6才1カ月)歯科症例121

 

右上奥歯部分の歯肉から膿が出ている

(この歯は4~5年前に欠けたそうです)

抗生物質を飲ませて一旦治まったが、その後また膿が出始めた

左上の犬歯の色がおかしい

とのことで、他院からの紹介で来院されました。

 

口腔内を確認すると

右上顎第4前臼歯が破折し、歯肉部分に炎症・排膿が認められました。

また、左上顎の犬歯は他の歯と色が異なっており、

歯髄に何らかの問題が起こっている可能性があるため、

歯科レントゲン検査での確認が必要と判断しました。

 

麻酔下での歯科検査・治療が必要であることをお伝えし、後日、術前検査、そして歯科処置を実施しました。

 

パグやフレンチブルドッグなどの犬種は頭蓋骨の長さに対して鼻の長さが短く、短頭種と呼ばれます。

短頭種の犬は生まれつき鼻の孔や空気の通り道が狭いことが多く、のどの構造も凝縮されているため、

呼吸器に問題が起こりやすい犬種です。

全身麻酔中は気管にチューブを通すため呼吸が安定しますが、挿管・抜管時のリスクが他の犬種より高まります。

安全な麻酔のためには、術前検査を充分に実施し、

それを踏まえた準備をしておくことがとても大切になってきます。

 

 

 

 

まず、麻酔下で口腔内を確認します。

破折している右上顎第4前臼歯です。

矢印の部分から膿が出ていました。

 

歯科レントゲン検査

破折していた右上顎第4前臼歯の歯根部は

歯槽骨が吸収され、黒く抜けています。

排膿はこの歯の内歯ろうによるものと分かり、

抜歯処置を行うことになりました。

 

 

内歯ろう(ないしろう)とは

感染により根尖(歯の根元)周囲に膿がたまると、その膿を排出するため管が作られます。

その出口が口腔内に出来た場合を内歯ろうといいます。

目の下の腫れや口腔内への出血・排膿などがみられ、抜歯処置が必要となります。

 

色が他の歯と異なっていた左上顎犬歯です。

よく見ると、先端部分が破折していましたが、露髄はしていませんでした。

 

 

歯科レントゲン検査

変色していた左上顎犬歯です。

レントゲンでは異常は認められなかったため、

今回は処置は不要と判断しました。

今後、経過を見ていく必要があります。

 

 

 

スケーリング

まず、超音波スケーラーで歯表面の汚れを落とします。

 

歯石を取ってみると、破折していた歯には大きな穴が開いていました。

 

 

歯周プローブ検査

膿が出ている右上顎第4前臼歯は歯周ポケットが6㎜もありました。

右下顎第2第3前臼歯はポケットが7㎜あり、ぐらついていることがわかりました。

 

歯神経ブロック

 

 

破折していた右上顎第4前臼歯の処置

この歯は3根歯(歯の根元が3本に分かれている歯)で、3本に分割してから抜歯します。(写真右は分割後)

 

抜歯

 

縫合

 

抜歯窩は、きれいに洗浄し、歯槽骨をトリミング後、縫合しました。

なめらかにトリミングし丁寧に縫合することで、処置後の痛みや不快感を軽減します。

 

ぐらついていた右下顎第2第3前臼歯も同様に処置し、洗浄・縫合しました。

 

 

ルートプレーニング

歯周ポケットの中を、1本ずつきれいにしていきます。

 

ポリッシング

フッ素配合の研磨ペーストを使用し、歯の表面をつるつるに磨くことで、

汚れが付きにくくなり、お口を健康に保ちやすくします。

 

歯科用軟膏の注入

 

 

 

 

 

 

 

 

退院翌日には「とっても元気!食欲も旺盛で、腫れたり痛がったりもしていません」との報告をいただきました。

処置から1週間後の診察では、抜歯縫合部は全く問題なく、歯肉の炎症も治まっていました。

 

 

今回のケースでは、歯の破折による感染で歯の根元に膿が溜まり、「内歯ろう」となっていました。

このような場合、抗生物質投与などの内科的な治療で一時的に改善することはありますが、

やはり原因治療をしないといずれ再発してしまいます。

 

今回、処置を受けていただき、本当に良かったと思います。

これからは毎日のデンタルケアと定期的な検診で、良い状態を維持しましょう。

 

2020年07月28日