ミニチュアダックスフンド 9才7カ月 男の子
2日前に前歯が抜け落ちた
他の歯も汚れている
クシャミを連続ですることがあるとのことで来院されました。
口腔内を確認すると、歯垢・歯石が多く歯肉の炎症もあり、進行した歯周病が認められました。
特に上顎犬歯部分の歯肉は退行してとても赤く、ひどい炎症を起こしていました。
治療のためには麻酔下での歯科処置が必要であることをお伝えし、飼い主さまはすぐに処置を受けることを希望され、処置日と術前検査を予約して帰られました。
後日、術前検査を行いました。
また歯肉の炎症がひどく出血もあったため、術前から抗生物質を飲ませていただき、感染による炎症を軽減した後に麻酔下での歯科検査や歯科治療処置を実施しました。
麻酔導入後まずは歯科検査を行います。
歯周プローブ検査
歯周ポケットは上顎の犬歯が2本とも12mm以上ととても深くまた右上顎第2前臼歯(写真の歯です)も12mm以上ありました。
右下顎後臼歯のポケットも7mmありました。
この2本の歯は歯槽骨の吸収がみられ、(歯根部周囲の黒く抜けている部分です)ひどくぐらついていたため、抜歯処置が必要となりました。
歯科検査後、歯神経ブロックを行いました。
次に超音波スケーラーを使って汚れを落とし、ルートプレーニングを行いました。
歯肉縁下の汚れを1本ずつ手作業でかき出していきます。
見た目をきれいにするのではなく、このように専用の器具を使い、繊細な技術で歯周ポケットの中まできれいにするのが、口腔内を健康にする「歯科治療」です。
汚れを落とした後、ポケットが非常に深かった上顎の歯に、通水テストを行いました。
上顎犬歯2本と右上顎第2前臼歯は、歯周ポケットから注入した生理食塩水が鼻から出てくるのが確認され、口腔鼻腔ろうになっていることがわかりました。
※口腔鼻腔ろう:上顎歯の歯周病が進行すると、歯を支えている歯槽骨が吸収され鼻腔まで達します。すると口腔と鼻腔がつながった状態になり、これを口腔鼻腔ろうと言います。
クシャミ・鼻水・鼻出血・目ヤニなどの原因となり、根本的治療は、まず原因となる歯を抜歯することです。
このワンちゃんはクシャミを連続ですることがあるとのことでしたがその症状も口腔鼻腔ろうが原因となり起こっていたと考えられます。
そこで、鼻とつながっていた上顎犬歯も抜歯処置が必要となりました。
様々な歯科検査結果を組み合わせて、抜歯する必要があるか総合的に判断し、今回の処置では合計4本の歯を抜歯・縫合しました。
多根歯(歯の根元が2本または3本に分かれている歯)は歯科用の高速バーで切断・分割してから抜歯しました。
抜歯後、穴の開いた状態になった部分をなめらかにトリミング・生理食塩水にて洗浄し、抜歯創保護材と充填後、歯肉を縫合しました。
ポリッシング
🍀退院時には、歯科検診結果表をお渡ししています。🍀
退院翌日、様子をお聞きしたところ
「昨日は疲れていたようで帰ってからよく眠っていましたが、今日は元気で食欲もあります。
ただエリザベスカラーを付けているため、うまく食器から食べられないみたいです。
食べた後に少しだけ口を気にする様子がありますが、もともと口をこすりつける癖があるので。」とのことでした。
経過①(処置から1週間後):「退院時は顔が腫れていましたが、今は腫れも引き、元気にしています。」とのこと。
歯肉の炎症はかなり引いていて、抜歯・縫合部分も問題ありませんでした。
歯科用軟膏を再注入し、1週間後に再度来院していただくようお伝えしました。
経過②(処置から2週間後):歯肉の炎症はほぼなくなりました。
この日は歯のことでの来院でしたが、以前から皮膚病を繰り返していてかゆみがあるとのことでしたので皮膚病の治療も開始しました。
今回の処置でデンタルケアが終了したわけではありません。
歯科処置はデンタルケアの始まりであり、これからのお家でのケアがとても大切です。
歯みがきの仕方についてもお伝えしました。
歯みがき教室の様子
後日来院の飼い主さま。
「奥歯は磨けるようになりましたが、前歯は磨かせてくれません。一瞬触れるだけ・・・」とおっしゃっていました。
切歯(前歯)が磨きやすいようにとすこし先の尖ったタイプの歯ブラシも試していただきました。
中々難しいそうですが、一瞬であっても毎日続けることが大切です。
少しづつ磨ける時間が長くなっていけばいいですね。
☆またお気軽にご相談ください☆
引き続き、ご家庭でのデンタルケア、頑張りましょう!